植栽計画の「センス」を「データ」に変える。緑地設計支援システム「UUell(ウェル)」が現場と設計にもたらす変革

建設業界では今、脱炭素社会の実現や生物多様性の保全に向けた「グリーンインフラ」への注目が急激に高まっています。しかし、若手の現場監督や設計担当者にとって、樹木の選定や配植計画は「専門知識が必要で難しい」「成長後の姿が想像しにくい」といった、経験値に頼らざるを得ない領域でもありました。

そんな中、安藤ハザマが開発した**緑地設計支援システム「UUell(ウェル)」**は、これまでの植栽計画のあり方を根本から変える可能性を秘めています。


《UUell(ウェル)》とは?

安藤ハザマが発表した**「UUell(ウェル)」は、一言で言うと「BIMを活用し、日照解析や成長予測に基づいた最適な植栽計画を自動でシミュレーション・可視化する技術」**です。

プレスリリース上では、

「BIMモデルを活用し、建物周辺の日照条件に応じた適切な樹種の選定や、数十年後の樹木の成長予測を3Dでシミュレーションすることで、意匠性・環境性能・メンテナンス性を両立した緑地設計を支援するシステム」 (要約)とされています。

このシステムは、単に「木を配置する」だけでなく、その場所が「その木にとって本当に育ちやすい環境か」を科学的に分析し、建物と植物が共生するための最適な解答を導き出します。

引用元:安藤ハザマ ニュースリリース(2026年1月29日)


従来工法との違い

これまで、ビルや施設の緑地設計は、主に**「2Dの図面と経験則」**で行われてきました。

そのため、以下のような課題が頻繁に発生していました。

  • 【従来の課題①】環境ミスマッチによる枯死 建物の影になる場所に陽樹(日光を好む木)を植えてしまい、竣工後数年で枯れてしまう。または、逆に直射日光が強すぎて葉焼けを起こす。
  • 【従来の課題②】成長後の干渉トラブル 植栽時は小さくても、10年後に想像以上に大きく育ち、建物の窓を塞いだり、外壁を傷つけたり、隣地に枝がはみ出したりして、多額の剪定費用が発生する。

「UUell」では、**「3Dシミュレーションとデータベースの連動」**によって、これらが劇的に変わります。 具体的には、建物のBIMデータから正確な日影図を作成し、その場所の日照時間に耐えられる樹種をデータベースから自動抽出します。さらに、5年後、10年後の成長した姿を3Dで可視化できる点が大きな違いです。

引用元:安藤ハザマ ニュースリリース(2026年1月29日)


【現場目線】正直どうか

現場管理を担当する若手社員の目線で見ると、「UUell」の導入には以下のような実利があります。

1. 配植位置の根拠が明確になる

現場での一番のメリットは、「なぜここにこの木を植えるのか」という位置出しの根拠がデータで示される点です。 従来の図面では曖昧だった配置も、3Dモデル上で建物との距離や日照条件が最適化されているため、職人さんへの指示出しに迷いがなくなります。「設計段階でシミュレーション済みです」と言えることは、施工品質の裏付けとなります。

2. 将来的なメンテナンス負担の軽減

次に、**「建物との離隔距離が考慮されているため、将来的な枝打ち等のメンテナンス負担が減る」**ことです。 竣工後の管理まで責任を持つ施工管理にとって、数年後に「木が大きすぎて看板が見えない」「樋(とい)に葉が詰まる」といったクレームが出るのは避けたいものです。UUellは成長後のボリュームを予測して配置するため、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。

一方で、注意点もあります

それは、**「システム上のデータと実際の苗木の形状が異なる場合の微調整が必要」**という点です。 工業製品と違い、樹木は一本一本「枝ぶり」が異なります。システムのシミュレーションでは完璧でも、実際に納入された樹木の形によっては、現場でその場に合わせて向き(樹冠の向き)を調整したり、数センチ単位で位置をずらしたりする「現場の目」は、引き続き重要になります。


【設計目線】ここが変わる

設計担当者、特に若手の設計者にとっては、業務効率と提案力の向上が期待できます。

設計で楽になる点

一番大きいのは、**「日照解析と連動して耐陰性のある樹種を自動選定できるため、手戻りが減る」**点です。 これまで「ここは暗そうだから、なんとなく日陰に強そうなアオキかな?」と調べては選び直していた作業が自動化されます。科学的根拠に基づいた選定ができるため、施主へのプレゼン時も「なぜこの樹種なのか」を自信を持って説明できます。

また、従来は避けていた**「高密度な都市部での複雑な植栽設計」**も、現実的な選択肢になります。狭小地や複雑な形状のビル周りでも、正確なシミュレーションがあれば、攻めたデザインが可能になります。

注意すべき点

一方で、**「設計側で考慮すべき点(入力データの精度)」**には注意が必要です。 周辺建物の高さや壁面の反射率など、BIMモデルの精度が低いと、シミュレーション結果も狂ってしまいます。「ソフトが選んでくれたから大丈夫」と過信せず、シミュレーションの前提条件が正しいかをチェックする能力が求められます。


従来手法とUUellの比較

緑地設計における「これまで」と「これから」を比較表にまとめました。

比較項目 従来の手法(アナログ・2Dベース) UUell(デジタル・BIMベース)
樹種選定 設計者の知識やカタログ調査に依存 日照解析に基づきデータベースから自動抽出
成長予測 2D図面と経験による想像 3Dモデルで5年・10年後の姿を可視化
環境性能評価 計算が困難(感覚的な評価) CO2吸収量や温熱環境改善効果を数値化
施工・管理 現場での現物合わせが多い データに基づく正確な位置出しと維持管理計画

結論|向いている現場・向いていない現場

「UUell」は非常に強力なツールですが、すべての現場に一律に導入すればよいというわけではありません。

【向いている現場】

  • 都市部のビル外構・再開発案件 周辺建物による日影の影響が複雑で、緻密な日照解析が必要な現場。
  • CASBEEやWELL認証などの取得を目指す現場 環境性能を数値で証明する必要がある、環境配慮型プロジェクト。
  • 長期的なメンテナンス計画が重視される施設(病院、学校、公共施設など) 将来的な管理コストをあらかじめ抑えておきたい現場。

【向いていない現場】

  • 小規模で平坦な戸建住宅外構など シミュレーションにかけるコスト(BIM入力の手間)が、実際のメリットを上回ってしまう場合。
  • 既存の樹木をそのまま活かす(既存樹保全)がメインの現場 自然の造形をそのまま活かすような芸術性の高い日本庭園など、数値化しにくい領域が優先される場合。

まとめ:若手技術者へのメッセージ

これからの建設業において、緑地は「建物の付録」ではなく、建物の価値を決める「資産(アセット)」です。 「UUell」のようなデジタル技術を使いこなすことで、経験が浅い若手でも、ベテラン以上の根拠を持って、長く愛される緑地を作ることができます。

現場に出た際、あるいは設計図を引く際、「この木は10年後どうなっているか?」という視点を持ってみてください。そのとき、「UUell」という選択肢を知っていることが、あなたの大きな武器になるはずです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


上部へスクロール