建設業界では「BIM/CIM」の活用が急速に進んでいますが、現場の最前線では今もなお「2Dの紙図面」が正として扱われる場面が多くあります。3Dでモデルを作っても、結局は人間が時間をかけて2D図面に書き起こす……そんな「二度手間」を解消する画期的な技術が登場しました。
《配筋図自動生成システム》とは?
株式会社大林組が発表した「配筋図自動生成システム」は、一言で言うと「BIMモデル(3Dデータ)から、施工に必要な2Dの配筋図をボタン一つで自動的に作成する技術」です。
プレスリリース上では、以下のように説明されています。
3Dモデルから配筋図を自動生成するアルゴリズムを開発。これまで多大な時間を要していた配筋図の作成業務を大幅に効率化し、設計から施工までのデータのシームレスな連携を実現する
これまで、3Dモデルは「干渉チェック」や「視覚的な確認」には使われてきましたが、実際の職人さんに渡す「配筋図」にするためには、設計者が改めてCADソフトで一本一本線を引く必要がありました。この技術は、その「作図」という工程をコンピュータに肩代わりさせるものです。

BIM/CIM配筋モデル自動生成ツールに2次元図面と3次元配筋モデルの相互連動機能を実装
従来工法との違い
これまで、複雑な配筋の施工図作成は、主に「3Dモデルを参照しながらの手動作図」で行われていました。
そのため、以下のような問題がありました。
- 【従来の課題①】図面の整合性チェックに膨大な時間がかかる
3Dモデルを修正しても、2D図面を手動で直し忘れると、現場で「図面とモデルが違う!」というトラブルが発生します。これを確認するために、若手社員が何百枚もの図面を突き合わせる作業が発生していました。 - 【従来の課題②】図面作成期間が工期を圧迫する
複雑な部位の配筋図作成には熟練の技術が必要で、外注を含めると数ヶ月単位の時間がかかることも珍しくありません。これが設計変更の足かせになっていました。
《配筋図自動生成システム》では、「3Dモデルが正(マスターデータ)」となり、そこから常に最新の2D図面が切り出される点が大きな違いです。モデルを直せば図面も即座に更新されるため、人間が「書き写す」作業がなくなります。

従来手法と自動生成システムの比較表
| 比較項目 | 従来の手法(手動作図) | 配筋図自動生成システム |
|---|---|---|
| 作図時間 | 数週間〜数ヶ月 | 数分〜数時間(大幅短縮) |
| 整合性 | ヒューマンエラーが発生しやすい | モデルと図面が常に完全一致 |
| 設計変更への対応 | 修正漏れのリスクが高く、時間がかかる | モデル修正のみで即座に反映可能 |
| 必要なスキル | 高度なCAD操作と配筋の知識 | BIMモデルの構築スキル |
他社技術との比較の詳細は以下の記事から。
大林組の配筋図自動生成技術が建設DXを加速|BIM/CIMと2次元図面の完全連動で作業時間を90%削減
【現場目線】正直どうか
メリット①:図面の見落としや整合性チェックの時間が劇的に減る
これまでは、配筋検査の前に「この断面図、最新の修正が反映されてるかな?」と不安になりながらチェックリストを埋めていたはずです。自動生成なら、モデルさえ合っていれば図面が間違っていることはありません。これにより、若手でも自信を持って図面を読み込み、現場の職人さんに指示を出すことができます。
メリット②:設計変更への対応スピード向上
現場が始まってからの「やっぱりここを変えたい」という変更は、図面の修正待ちで工程が止まる原因になります。自動生成によって図面がすぐに出てくるようになれば、工程の遅延リスクを最小限に抑えられます。
注意点:結局最後は人の目で確認が必要
コンピュータは「ルール通り」に図面を引きますが、現場で実際に鉄筋を組む際の「手が入るスペースがあるか」「結束しやすいか」といった、職人さんの作業性までを100%考慮しきれない場合があります。システムを過信せず、「組めるかどうか」の最終判断は現場監督の腕の見せ所として残ります。
どんな現場でもボタン一つで完結する、という魔法の杖ではありません。
【設計目線】ここが変わる
設計担当者の目線では、「2D図面化という単純作業から解放される」点が非常に大きいです。
設計の本質は「構造の安全性を考え、最適な配筋を計画すること」であり、それを紙に描く作業は付加価値を生みにくい部分でした。この時間が削減されることで、より高度な技術検討に時間を割けるようになります。
また、これまで難しかった「複雑な形状の配筋設計」も、現実的な選択肢になります。
手書きでは図面化が困難だった3次元的な曲面構造なども、3Dモデルさえ作れば図面が自動生成されるため、意匠性の高い設計に挑戦しやすくなります。
一方で、「設計側で考慮すべき点(BIMモデルの入力精度)」には注意が必要です。
「図面を自動で出す」ためには、その元となる3Dモデルに属性情報(鉄筋の径、ピッチ、継手の位置など)を正確に入力しなければなりません。適当なモデルからは適当な図面しか出てきません(GIGO:ゴミを入れたらゴミが出る)。設計の初期段階での緻密さが、これまで以上に求められるようになります。
結論|向いている現場・向いていない現場
結論として、大林組の「配筋図自動生成システム」が向いているのは以下のような現場です。
【向いている現場】
- 同じ構造が長く続く現場
(例:高速道路や鉄道bなど。自動化による時間短縮効果が最大化されます) - 設計変更が頻繁に予想される現場
(例:フロントローディングが求められる大規模再開発プロジェクトなど) - BIM/CIMをフル活用する方針の現場
(例:i-Constructionを推進している公共工事など)

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