橋梁点検のDX革命!鹿島建設の「BMStar®_AI」とは?若手技術者が知っておくべき「AIとの付き合い方」

建設業界に入って数年の皆さんは、現場での「点検」や「調書作成」の多さに驚いているのではないでしょうか。特に橋梁は数が多く、老朽化対策が急務となっています。そんな中、鹿島建設が発表した最新のAI技術「BMStar®_AI」が、これからのメンテナンス業務のスタンダードになろうとしています。

《BMStar®_AI》とは?

鹿島建設株式会社が開発・発表した**BMStar®_AI(ビーエムスター・エーアイ)は、一言で言うと「AIが橋梁の写真を解析し、損傷のランク付けや健全度診断を自動でサポートしてくれるWebシステム」**です。

プレスリリース上では、

「点検技術者が撮影した橋梁の損傷箇所の画像をAIが識別することにより、橋梁の損傷範囲・程度の検出・区分評価および健全度診断を支援するWebシステム」

とされています。

これまで「ベテランの眼」に頼り切りだった診断業務に、AIという「客観的な物差し」を導入し、Webブラウザ上で誰でも高度な解析ができるようにするまでは各社行っていますが、それを統合的なシステムまでブラッシュアップさせた点が今回のポイントです。

引用元:鹿島建設プレスリリース(2025年11月17日)

従来工法との違い

これまで橋梁の点検・診断は、主に「現場での目視点検 + 手書きの野帳&写真撮影 + 帰社後の手作業による調書作成」という非常にアナログなやり方で行われてきました。

そのため、現場と事務所の両方で以下のような課題がありました。

  • 従来の課題①:点検技術者の深刻な不足と負担増 国内にある約73万橋の道路橋のうち、建設後50年を超える橋梁は急速に増えています。しかし、点検できるベテラン技術者は減っており、現場での記録から事務所での入力作業まで、一人ひとりの業務量が限界を超えつつあります。
  • 従来の課題②:診断精度のバラつき(属人性) 「このひび割れは軽微なのか、修繕が必要なレベルなのか」という判断が、点検者の経験値や主観に左右されることがありました。若手とベテランで診断結果が食い違うことも珍しくありません。

BMStar®_AIでは、「画像認識AIによる自動判定とデータ連携」を行う点が大きな違いです。写真データをアップロードするだけでAIが損傷を判別し、そのまま診断データとして蓄積されるため、情報の断絶がなくなります。

比較項目 従来手法 (アナログ) BMStar®_AI (デジタル)
診断の方法 人の目による目視点検 AIによる画像解析支援
判断の基準 技術者の経験・主観 AIによる客観的ランク付け
事務作業 帰社後の手入力・写真整理が膨大 システム連携により自動化・効率化
診断の範囲 目視および打音(内部推測含む) 表面の損傷画像が対象(内部は不可)
設計への活用 過去データの参照が困難 デジタルDB化で長寿命化設計に直結

【現場目線】正直どうか

現場を任される若手技術者の皆さんにとって、このシステムの導入は「働き方」そのものを変える可能性があります。

現場目線で見ると、BMStar®_AIの一番のメリットは、点検診断作業の圧倒的な効率化です。 これまでは現場で撮った写真を事務所で整理し、CAD図面にプロットして、Excelの点検票に数値を打ち込む……という膨大な後作業がありました。BMStar®_AIなら、撮影した画像と診断結果がシステム上で直結するため、帰宅時間を早める大きな武器になります。

次に、診断精度の属人性排除です。 「自分の判断が間違っていたらどうしよう」という不安は、若手なら誰しもが抱えるものです。AIが客観的な基準で損傷をランク付けしてくれるため、自信を持って診断を進めることができます。ベテランへの確認作業も「AIはこう言っていますが、どうでしょうか?」という具体的な相談ができるようになります。

一方で、現場で最も注意すべき点もあります。

それは、内部の劣化進行は対象外であるという点です。 このシステムはあくまで「表面の画像」を解析するものです。例えば、コンクリート内部での鉄筋腐食や、目に見えない空隙、鋼材の内部亀裂など、「表面に現れていない異常」をAIが透視してくれるわけではありません。

また、入力データの品質依存にも注意が必要です。 写真がピンボケしていたり、暗すぎたり、スケール(定規)が適切に写っていなかったりすると、AIの判定精度は著しく低下します。「良い診断は、正確な現場写真からしか生まれない」という基本は、AI時代でも変わりません。

【設計目線】ここが変わる

設計やアセットマネジメント(維持管理計画)を担う部署にとっても、このシステムの恩恵は計り知れません。

設計目線では、「長寿命化設計」へのフィードバックが容易になる点が大きいです。 AIによって蓄積されたデジタルデータは、橋梁の「健康診断の履歴」になります。どの部位が、どれくらいのスピードで劣化しているかがグラフ化・データ化されるため、従来の「一律○年で補修」という計画ではなく、橋ごとの個性に合わせた「合理的で無駄のない補修設計」が可能になります。

これまで難しかった**「予防保全型」の設計**、つまり深刻な壊れ方をする前に先回りして直す計画が、裏付けデータを持って提案できるようになります。

一方で、設計側で考慮すべき点として、AIの限界を理解した「最終判断の責任」があります。AIが出した数値はあくまで「支援」です。構造的な特性や周辺環境(塩害や交通量)を総合的に判断し、最終的な修繕方針を決定するのは、依然として設計技術者の役割です。

結論|向いている現場・向いていない現場

【向いている現場】

  • 管理する橋梁数が多く、定期点検を回すのが精一杯な自治体案件 (効率化による時間短縮効果が非常に高い)
  • RC橋(鉄筋コンクリート橋)やシンプルな鋼桁橋 (AIが学習しやすい標準的な損傷が多い現場)
  • 若手主体のチームで、診断基準の平準化を急いでいる現場

一方で、以下のようなケースでは、AIだけに頼るのではなく、従来通りの慎重な調査が必要です。

【向いていない現場】

  • 内部劣化(アルカリ骨材反応や内部空隙など)が強く疑われる古い橋梁 (表面解析だけでは構造的な安全性を担保できないため)
  • 特殊な構造形式や、極めて珍しい損傷形態を持つ歴史的橋梁 (AIの学習データ外であり、誤判定のリスクがある)
  • 極端に暗い場所や、足場が悪く適切な近接撮影が困難な箇所

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