橋梁点検のDXを加速する鹿島建設の「BMStar®_AI」とは?AI診断による効率化と他社技術との比較を徹底解説

ニュースリリースの紹介と要約

 鹿島建設株式会社は、橋梁の損傷・健全度診断を支援するWebシステム「BMStar®_AI」を開発し、運用を開始しました。このシステムは、カメラやタブレットで撮影した橋梁の画像から、AIが損傷の範囲や程度を自動で検出し、健全度を診断するものです。

従来、橋梁点検は専門技術者の目視と経験に頼る部分が大きく、診断結果のばらつきや、膨大な写真整理に伴う事務負担が課題となっていました。「BMStar®_AI」は、最新の国土交通省「橋梁定期点検要領(令和6年7月)」に準拠しており、現場での即時診断や、複数枚画像の一括処理を可能にすることで、点検業務全体の効率化と精度の均一化を実現します。

すでに青森県での維持管理業務に導入されており、鹿島グループのリテックエンジニアリング株式会社を通じて全国の自治体や点検業者向けに販売が開始されています

出典:橋梁の損傷・健全度診断を支援するWebシステム「BMStar®_AI」を開発・運用

開発の背景:インフラ老朽化と「2024年の壁」

 日本国内には約72万橋の道路橋が存在しますが、その多くは高度経済成長期に建設されたものであり、今後20年で建設後50年を経過する橋梁の割合は激増します。国土交通省の報告によると、2024年度から橋梁点検は「第3巡目」に突入し、より精度の高いデータ管理と効率的な修繕計画が求められています。

 しかし、建設業界は深刻な技術者不足に直面しており、地方自治体においては予算と人員の制約から、法定点検の実施や適切な修繕の判断が困難になる「インフラ維持管理の危機」が叫ばれています。また、2024年7月に改定された「橋梁定期点検要領」では、診断の質向上と記録の標準化がこれまで以上に強く求められるようになりました。

 このような背景から、鹿島建設は2013年より青森県と共同開発してきた橋梁維持管理システム「BMStar®」に、最新の画像解析AIを統合。専門知識を持つ技術者が不足している現場でも、迅速かつ正確に診断を行える環境を構築するために「BMStar®_AI」を開発しました。

引用元:橋梁等の2024年度(令和6年度)点検結果をとりまとめ | 国土交通省

他社の類似技術との比較

橋梁点検へのAI導入は、大手ゼネコンやIT企業各社が取り組んでいる激戦区です。鹿島建設の「BMStar®_AI」が持つ優位性を、他社の主要技術と比較して検証します。

項目 鹿島建設:BMStar®_AI 大成建設:t.WAVER NEC:衛星SAR+AI 富士通:Zinrai(振動解析)
主要手法 画像解析(Webシステム) 画像解析(ひび割れ特化) 衛星リモートセンシング 加速度センサーデータ解析
診断対象 コンクリート・鋼橋 コンクリート橋脚等 橋梁全体の「たわみ」 床版内部の損傷
強み 最新点検要領への完全準拠 ひび割れ抽出精度80%超 遠隔からミリ単位の変位検知 目視困難な内部損傷の推定
導入形態 Webブラウザ(スマホ可) 専用ソフトウェア サービス提供型 センサー設置・解析
リンク 公式サイト 公式サイト 公式サイト 公式サイト

他社技術が「ひび割れ検出」や「遠隔計測」といった特定の要素技術に特化しているのに対し、鹿島の「BMStar®_AI」は「点検ワークフロー全体のDX」に重きを置いています。

  • 最新要領への対応: 国交省の2024年改定要領に即した診断が可能なため、法定点検の結果としてそのまま利用しやすい。
  • デバイスフリー: Webブラウザベースのため、高価な専用機材や高性能PCを現場に持ち込む必要がなく、汎用タブレットで完結する。
  • 管理システムとの統合: 単なる診断ツールではなく、2013年からの実績がある維持管理システム「BMStar」と直結しており、点検から修繕計画策定までの一貫性が担保されている。

現場・設計への影響:導入のメリットとデメリット

現場への影響(点検・施工管理)

  • メリット
    • 即時性: 撮影したその場でAIが診断を行うため、重要な損傷の見落としを防ぎ、再点検のリスクを低減します。
    • 省力化: 大量の写真を事務所に持ち帰ってから1枚ずつ整理・判定する作業が、AIの一括処理により大幅に短縮されます。
    • 平準化: 熟練技術者でなくても、AIの支援により一定水準の診断結果を得ることができます。
  • デメリット(注意点)
    • 通信環境への依存: Webシステムであるため、山間部などの電波が届かない場所でのオフライン対応やデータ同期の仕組みが重要となります。
    • 撮影品質の依存: 写真の解像度や光の加減により精度が左右されるため、適切な撮影技術(教育)が依然として必要です。

設計・維持管理計画への影響

  • メリット
    • データの信頼性: AIによる客観的な数値(損傷範囲等)が記録されるため、経年変化の比較が容易になり、修繕時期の予測精度が向上します。
    • コスト最適化: 早期の微細な損傷を確実にキャッチすることで、致命的な損傷に至る前の「予防保全」が可能となり、ライフサイクルコストの削減につながります。

今後の展開予想

鹿島建設は「BMStar®_AI」を皮切りに、建設DXの更なる深化を目指すと予想されます。

  1. デジタルツインとの連携: ドローンによる3次元計測データやBIM/CIMモデルとAI診断結果を統合し、仮想空間上に橋梁の「完全なコピー」を作成することで、将来の損傷予測シミュレーションを行う技術へと発展するでしょう。
  2. マルチモーダルAIの活用: 現在は画像解析が主軸ですが、今後は大成建設が取り組んでいるような生成AI(視覚言語モデル)を活用した「点検報告書の自動作成」や、センサーデータと画像を組み合わせた多角的な診断機能が追加される可能性が高いです。
  3. グローバル・インフラ市場への展開: 老朽化問題は日本のみならず、北米や欧州などの先進国共通の課題です。国交省要領に準拠した信頼性の高いシステムをベースに、各国の基準にカスタマイズした海外展開も視野に入ってくるでしょう。

鹿島建設の今回の発表は、単なる「AIブーム」に乗ったものではなく、10年以上にわたる自治体(青森県)との共同運用の知見をベースにしている点が、他社にはない圧倒的な「実用性」を感じさせます。現場で本当に使える技術かどうかが問われる今、Webベースでの軽快な操作性と最新の国交省基準への準拠は、普及の大きな鍵となるでしょう。

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